マンションの建替え

マンションは、10年から12年ごとに大規模な修繕を行い建物を維持管理していきますが、築40年前後には建替えということも視野に入れておく時期となります。
建物自体の耐久性という意味では、老朽化して朽ち果てるということはないのですが、維持管理のコストやライフスタイルの変化等様々な要因で建替えた方がいい場合も出てくるのです。

今回は、日本マンション再生支援機構の北川代表に「分譲マンションの現状と再生に向けた提案」というレポートをいただきましたので、ご紹介させていただきます。

1.分譲マンション再生の現状
1)増大する老朽化マンション
国土交通省が平成23年3月に公表された「マンション再生環境整備事業募集要領」での冒頭に記述されたものです。
「築後50年を超えるマンションが、今後、飛躍的に増加することが見込まれており(現在1万件、10年後13万件、20年後94万件)、こうした高経年のマンションは、耐震性の問題、住戸面積が狭い、バリアフリーに対応していない等の問題を抱えているものも多いが、一つの建物を多くの人が区分して所有するマンションは、各区分所有者等の共同生活に対する意識の相違、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の難しさ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさといった特殊性があり、それがマンションの管理等の現場における様々な紛争を誘発し、合意形成を困難なものとしており、マンションの再生が進まない大きな要因となっています。」 今後老朽化したマンションが加速度的に増加することが予想されています。
2)困難な分譲マンションの再生
マンションの再生について国土交通省の公表している答申「分譲マンションストック500万戸時代に対応したマンション政策のあり方について」(社会資本整備審議会平成21年3月)の記述から抜粋したものです。
「マンションの建替えに関しては、これまで、平成20年10月時点で129件(被災マンションは含まない。)の完了事例があるが、老朽マンションのストック全体の一部にとどまっている。
建替えの実施に関する課題としては、現在のマンションが建築基準法上既存不適格であるという問題や、検討費用の確保、修繕・改修又は建替えのいずれにするかの判断の難しさ、高齢居住者や低所得者などの個別の事情への配慮が必要であること等が挙げられている。」
同様に国土交通省の公表している「マンション建替え事業の実施状況(平成23年10月1日現在)」でも工事完了済が167件に留まっています。
以上のような状況から、分譲マンションの管理について何らかの対応策が施されない限り、老朽化したマンションが再生されないまま増加し、現在すでに一部に見られるように居住者の一部が不在になったり、適正な管理ができなくなり、スラム化したマンションが広く見られるようになることが十分予想されます。
2.分譲マンション再生に向けた提案
現在の日本の経済状況の中ではマンションは経年とともに資産価値は急速に低下していきます。その資産価値を維持してゆくためにはマンションの再生、すなわち改修あるいは建替えの計画の作成とそれに向けた実効性のある管理の実施が必要です。
そのために、まず改修・建替え計画を作成し、改修・建替え後の具体的な建物イメージと各区分所有者の事業費の負担額、そして事業費の資金調達の具体的な方策等を明確にする必要があります。
・改修・建替え計画の作成(改修・建替え後の建物イメージを明確にする。)
現在の敷地、あるいは周辺地区との開発も視野に入れて、改修・建替えの具体的な計画を作成します。
・改修、建替えに必要な事業費の算出、各区分所有者の負担額の算出
改修・建替えに必要な事業費と各区分所有者の負担額を算出して、資金調達の具体的な検討が行えるようにします。
・組合向け、区分所有者向けの融資制度の整理
事業費の資金調達に活用できる融資制度を検討します。
・住宅金融支援機構の組合向けの共用部リフォーム融資、まちづくり融資、あるいは区分所有者向けの住宅ローンや高齢者向け融資制度を活用します。
・地方自治体の改修・建替え向け補助金制度を活用します。
・一般銀行の融資制度を活用します。
・改修・建替えに向けた積立金の創設
改修・建替えのための財源を確保するために現在のマンション管理を見直して管理費を削減する、あるいは日常の工事や大規模修繕工事の内容を見直して工事費を削減する、あるいはマンション保険や財務管理を見直して無駄をなくして、改修・建替えのための資金を積み立てます。 例えば、改修・建替え積立金を創設して各戸で毎月1万円を確保すると、年間12万円、50年で600万円+利子の財源が各戸で確保できるようになります。