大震災のマンション被害と地震保険について

東北関東大震災で被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

また、亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

今回の地震による、マンションの被害状況はどうだったのでしょうか。現在、マンションの被害状況については未だ、まとまった調査結果のようなものは出ていないようです。ツイッター上では、自宅マンションの被害について、外壁タイルの破損や屋上の水槽タンクの破損、室内の壁紙の亀裂や、ガラスの破損などが上がっていました。また、立体駐車場の一部損壊をあげている方もいらっしゃいました。

宮城県のある施工業者の方はブログで、仙台市内の被害の酷かったマンションについて、「開放廊下の壁は激しくひび割れて欠損し、中には鉄筋が露出して穴が開いている個所もあります。スチールの枠と扉は2~3cmほど歪んでしまい、殆どの扉は完全にロックされて開閉はできません(中略)外壁は厚さ3cmのモルタル層と共にはがれ、地震特有のX印型に激しくひび割れと欠損が生じています。サッシの枠も露出して建付けも損傷が見られ、風や雨水が室内に侵入しそうな状態です。」と書いています。このマンションは、特に耐震性に問題があるとされる昭和56年の建築基準法改正以前の旧耐震基準で建てられたマンションで、現在の耐震基準と比べ強度不足が考えられるそうです。このマンションのケースは特に酷い被害状況のようですが、東北関東大震災のマンション被害について、今後のまとまった調査結果が待たれます。 過去の大規模地震でのマンション被害はどうだったのでしょうか。

2004年に起きた新潟県中越地震(長岡市内で震度7)では、ある分譲マンションが「一部損壊」と判定されたところを、その後の自治体による調査で、マンションのうち17戸が半壊に格上げされたそうです。マンションの被害判定は、建物全体で見るのが原則ですが、「実際には同じマンションでも被害は部屋によって違うことが多い」(朝日新聞)そうです。一部損壊、半壊、全壊では、補償額(義援金の配分)等にも違いがでてきます。このケースでは、 各戸の被害程度を理事会が記録に残していたことで、各戸の判定に役立ったといいます。

一方、2005年3月に起きた福岡県西方沖地震(福岡市等で震度6弱)では福岡市内の新築高層マンションに大きな被害が出ました。「各階で、ベランダや玄関周辺の壁などに無数のひびが入った。廊下や駐車場の共有部分でも壁がはがれ落ち、中の鉄骨があらわになっている部分もある。特に2階から7階くらいまでの中層階でダメージが大きく、玄関のドアがグニャグニャに湾曲している。」(「AERA」2005年5月2日号より)新耐震設計法施行によって、耐震性は強化されたものの、新耐法は建物自体が倒壊して人がつぶされないことが基準となっており、非構造壁のドアや壁は おろそかにされたため、と記事では分析しています。

1995年1月に起きた阪神淡路大震災(阪神間及び淡路島の一部で震度7)は、都市直下型地震であり、強力な縦揺れにより多くの木造建築が倒壊し、旧耐震法で建てられたビルやマンションでも倒壊、半倒壊が見られましたが、昭和56年の建築基準法改正以降に建てられた新分譲マンションでの被害は局部倒壊に留まっています。東京カンテイが、兵庫県の5,352棟について、現地調査を行なった結果は、以下のようになっています。


損壊なし・損壊軽微 4,808棟 90%
損壊あり(※)  544棟  10%

(※)損壊内訳 大破(使用不能)  83棟  1.5%
中破(要大規模補修)       108棟   2.0%
小破(要補修)          353棟   6.5%


東京カンテイが2008年8月に出した調査結果によれば、「旧耐震基準マンション」は全国で22,659棟、1,461,059戸あり、「被害規模を抑制するためにもこれらマンションの耐震補強について個々の管理組合で協議されなければならないのはもちろんのこと、国レベルでも早急に対策が講じられるべき課題である。」と警告を発していました。


■地震保険について

今回の地震で被害に遭われたマンションの住民の方には、地震保険について気にされている方もいらっしゃるでしょう。

日本損害保険協会がホームページで公開している情報によれば、被害程度を「全損、半損、一部損」の3段階に分け、全損であれは保険金の全額、半損であれば50%、一部損であれば5%が支払われます。 ただし、その査定については「主要構造部」の被害程度に基づいて行われるため、「主要構造部」に入らない非構造壁や廊下などの壁に亀裂が走った程度の被害では、保険金は原則下りないそうです。

詳細は、同協会のホームページでご確認下さい。

http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-genzai_no_sigoto-hoken.kyosai-jisin-hoken.pdf

また、地震保険については、壁紙の亀裂などは、マンションの専有部分に当たりますので、自己負担になりますが、躯体に関する部分は、共有部分となりますので、管理組合の理事長さんにご相談されるのをおすすめします。まずは、被害の程度を見極め、写真などを撮り、証拠に残すことも重要だと思われます。